自賠責、接骨院の請求急増 ずさん審査で不正横行
朝日新聞デジタル2014年3月22日08時05分
車を持つすべての人が加入する自動車損害賠償責任(自賠責)保険に対し、
接骨院からの保険金請求が急増していることが分かった。
治療費の基準がなく、請求内容の審査もずさんなため、
不正請求が横行。
「生後半年の赤ちゃんが腰痛を訴えた」など、
現実にはありえない診断がまかり通っている。
国土交通省、金融庁など関係省庁は、改善策の検討に乗り出した。
損害保険料率算出機構・自賠責損害調査センターによれば、
2012年までの5年間で、交通事故件数は76万件から66万件に減った(13%減)。
負傷者は94万人から82万人に減少(13%減)。
一方、
12年度までの5年間で、接骨院が自賠責に請求した総施術費は
452億円から673億円と1・5倍に増えている。
接骨院を営む柔道整復師らでつくる公益社団法人・日本柔道整復師会によると、
接骨院による自賠責への請求が増えた一因には、
交通事故患者を抱き込んでの不正・過剰請求がある。
生後6カ月の乳児が「腰部の痛みを訴えた」とし、
「歩行困難になった」と診断した
川崎市の患者が40キロ離れたさいたま市の接骨院に半年間、1日も欠かさず通院した――。
そうした虚偽の疑いのある請求が増え、厳密な審査もないまま保険金が支払われている。
自賠責には健康保険のような治療費の算定基準がなく、
接骨院や医療機関が自由に治療費を決める。
診療日数の水増しのほか、治療費の過剰請求もあるという。
ある柔道整復師は、朝日新聞の取材に対し、
過剰請求を暗に認めつつ、
「通院日数を増やせば患者にも慰謝料が入る。患者も喜んで応じてくれる」と明かす。
一部の接骨院は、事故車両を扱う修理業者に呼びかけ、
交通事故患者を紹介してもらい、紹介料を支払う営業に乗り出している。
「交通事故専門」を売り文句にした接骨院も多い。
自賠責の保険金が野放図に使われると、車の所有者が負担する保険料の値上げにつながる。
自家用乗用車だと現在、3年で1台あたり3万9120円。
最近では11年度に11・7%、13年度にも13・5%値上がりしている(全車種平均)。
日本損害保険協会が昨年11月、不正請求の検討会を設置。
ここでの議論を踏まえ、国交省などが改善策を検討している。
〈柔道整復師〉厚生労働大臣認可の国家資格。
資格があれば、接骨院を開業できる。
1998年に2万9087人だったが、
2012年には約2倍の5万8573人に増えた。
施術対象は打撲やねんざ、骨折など。
急性などのけがに限り健康保険や自賠責保険が使える。
「整骨院」との名称で開業する例も多い。
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師はそれぞれ別の国家資格。
〈自賠責保険〉 自動車損害賠償保障法に基づき、
すべての車に加入が義務づけられている強制保険。
車の普及に伴って1955年に制度化された。
交通事故被害者の救済が目的で、社会保障制度的な役割をもつ。
補償は人的被害のみ。
1人の傷害に対する支払限度額は120万円で、
これを超える分は任意保険でまかなわれる。
保険料収入と保険金支払額が一致するよう、国が保険料を決める。
現在、自家用車だと、3年で1台あたり3万9120円。
年間の保険料収入は約7千億円(2011年度)にのぼる。
以上
自賠責むさぼる接骨院 121日連続治療・患者紹介に20万円
朝日デジタル2014年3月22日05時00分
自動車やバイクを持つすべての人から強制的に集めた金が、
過剰な治療費としてずさんに使われている。
接骨院が自動車損害賠償責任(自賠責)保険に関わる実態を調べてみると――。
中部地方の接骨院が、ある交通事故患者の治療費を
自賠責に請求した「治療証明書」を入手した。
2011年1月29日から5月29日まで
121日連続で治療したことになっている。
この患者は、土日も黄金週間も欠かさず来院したのか。
休診日はないのか――。
2月下旬に接骨院を訪ねた。
入り口に「交通事故治療ならご相談ください」「自己負担0円」との張り紙があった。
院長の柔道整復師は50代男性だった。
証明書の疑問をぶつけたところ、
「患者が休診日にも来たいと言ったので治療した」と話した。
「4カ月連続で?」と重ねて問うと、
院長は「患者の希望で……」と繰り返し、接骨院の懐事情に話題を移した。
■「患者も喜ぶ」
「健康保険だと、患者が1回来院すると治療費は1千円程度。
(自由診療の)自賠責だと約7千円。交通事故患者はありがたい」。
治療費とは別に、患者にも通院1日あたり慰謝料4200円が支払われるため、
「通院日数が増えるほど、患者も喜ぶんです」。
堺市の接骨院は「(交通事故患者)1名様ご紹介で
最大20万円お支払いします」とのチラシを作り、
事故車両を扱う修理業者などに配っていた。
治療費の15%を紹介者に支払うという。
チラシには、紹介者となった板金業者の
「毎月安定して40万円以上になっています!」との体験談も。
この接骨院に電話をしたところ、
院長は「忙しい」と取材を拒んだ。
その約10日後の2月上旬、院長は大阪府警に逮捕された。
交通事故の通院日数を水増しし、保険金をだましとったという詐欺容疑。
患者のタクシー運転手も共犯とされ、同容疑で逮捕された。
この1年で、宮城、茨城、東京などで同様の詐欺容疑で接骨院が摘発されている。
東京の柔道整復師は事故患者だけで月に数百万円を得ていたという。
接骨院が自賠責に群がる背景には柔道整復師の増加がある。
06年に3万8693人だったのが、
12年に5万8573人と1・5倍になっている。
厚生労働省が00年から養成学校設立の規制を緩めたためだ。
厚労省が10年に健康保険の治療費基準を厳しくした影響もあり、
交通事故患者の奪い合いが過熱したとみられる。
■損保、限度内なら甘い確認
接骨院の自賠責に対する保険請求の内容を審査しているのは主に損保会社だ。
自賠責保険を請求した人の9割は任意保険にも加入している。
この場合、任意保険を扱う損保会社が、自賠責と一括して事故調査をし、
自賠責と任意保険の合計額を患者側に支払う。
そのうえで、いったん立て替えた自賠責の支払い分を自賠責保険に請求する。
業界関係者によると、損保会社は、患者に支払う保険金が
自賠責の限度額120万円を超えなければ、自社の腹が痛まない。
限度額以下で済む場合、接骨院の休診日や患者への治療確認などをせず、
保険金を支払うことが多いという。
損保会社は調査結果などを
自賠責損害調査センターに送る。
センター関係者は「個々の件を確認する余力はなく、
損保会社の調査を信じるしかない。
支払いを拒否すれば、患者との示談を取り消すなど
大がかりな手続きが発生してしまう」。
一部の損保会社の代理店は、
接骨院と交通事故患者をつなぐコンサルタント業務にも乗り出している。
神戸市の代理店は3年前からコンサルを始めた。
近畿地方の約50の接骨院と契約。
保険会社の査定方法などを接骨院に教える勉強会を毎月開く一方、
車の修理業者に患者紹介を持ちかけ、接骨院とのパイプ役もする。
「月に数百万円稼ぐ接骨院もある」と言う。
保険代理店として利益相反にならないのか尋ねると、
やはりこう答えた。
「(自賠責限度額の)120万円以下で終われば、保険会社はいいわけですよ」
自賠責制度の不備を放置してきた背景には縦割り行政がある。
国土交通省は「保険会社の所管は金融庁。接骨院は厚生労働省だ」、
厚労省は「我々は健康保険だけ」、
金融庁も「自賠責は国交省」と押しつけ合ってきた。
自賠責保険関係者は
「接骨院に払う保険金が増えれば、車の所有者の家計に影響が出る。
国は対策を急ぐべきだ」と話す。
以上
接骨院の健康保険の不正請求の事件が多かったが、
最近は交通事故自賠責保険の整骨院による不正が目に付くようになっている。
事故が減っていても整骨院の自賠責保険請求は急増しているのは
一概に不正によるものとは言えないのですが
これまでにも健康保険の6割が不正請求だったという
会計検査院の調査があったように整骨院への不信感はある。
実際に交通事故の保険詐欺で逮捕者が増えてきてもいる。
自賠責保険の120万内なら保険会社も損がない仕組みだから
記事にあるように整骨院も損保会社、患者側も
自賠責保険をいいようにむさぼっている。
患者側は知らずに利用されている場合がほとんどと思うが
知っていて利益を得るひともいる様子。
自賠責保険はいわば税金なのに、、、、、
いわば税金なのに、国もどう使われていようが、不正があろうが
放置している、、、。「どうせ税金だから?
その金はせっせと国民が真面目に収めてくれるから、、、、、、」
などと言われないよう、しっかりと国は制度を見直せ!
資料
「就業柔道整復師数の年次推移」(単位:人) 各年末現在
H14年 H16年 H18年 H20年 H22年 H24年
柔道整復師 32,483 35,077 38,693 43,946 50,428 58,573
『柔道整復の施術所数の年次推移』(単位:か所)各年末現在
H14年 H16年 H18年 H20年 H22年 H24年
施術所数 25,975 27,771 30,787 34,839 37,997 42,431
(※平成22 年は、東日本大震災の影響により、宮城県が含まれていない。)
柔整ホットニュースより
自賠責保険料の推移
自賠責保険料 契約者負担分(2年契約、沖縄・離島を除く)(円)
年度 自家用乗用自動車 軽自動車
平成25年度 27,840 26,370
平成24年度 24,950 21,970
平成23年度 24,950 21,970
平成22年度 22,470 18,980
平成21年度 22,470 18,980
平成20年度 22,470 18,980
平成19年度 30,830 25,000
平成18年度 30,680 24,880
平成17年度 29,780 24,180
平成14年〜16年度
27,630 22,540
平成13年度 27,600 20,300
契約者負担分とは平成14年度から交付金制度がスタートし、
平成19年度までは全体の保険料から交付金が差し引かれて
おりましたが(平成17年度〜平成19年度にかけては段階的に減額)、
平成20年度から交付金が廃止されましたので、
現在では金融庁 自動車損害賠償責任保険審議会から発表される保険料=契約者負担分です。
また同審議会により毎年1月に翌年度の保険料が見直し検討されますが、
平成平成22、22、24年度は「基準料率の改定は必要ない」と結論付けられた為、
前年度と同額になっております。
CostDownより
厚労省、違法広告に対し指導徹底!2014/01/28
厚生労働省
は平成26年1月21日(火)〜22日(水)の2日間にわたり、
都道府県、指定都市及び中核市を対象に
全国厚生労働関係部局長会議(厚生分科会)を開催した。
この中で医政局医事課より
『あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師の施術所について』と
題した資料が提示され、
【施術所開設届等の際の資格確認】、
【広告の指導】の徹底についての連絡がなされた。
特に【広告の指導】に関しては、
最近、同課に「交通事故治療専門」や「むち打ち専門」といった
広告違反が行なわれているとの情報が多く寄せられているとし、
広告可能事項に該当しない「交通事故」といった文言や
料金に関する記載など、違法広告を掲げる施術所の開設者に対し
指導の徹底を求めた。